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【取材こぼれ話】1/27日経朝刊「認知症保険とレカネマブ」

みなさん、こんにちは。FP黒田です。

独立系FPの仕事は、個人相談や講演、執筆の「聞く」「話す」「書く」が三本柱と言われています。

FPとして、食べていくためには、この3つをバランスよく(あるいはある業務に特化するFPさんもいます)行うのが重要だと、私も駆け出しの頃よく先輩FPから言われたものです。

ただ、一部のFPは、これ以外に「取材」というのもよく受けます。

新聞や雑誌、機関紙、テレビなどなど媒体は多岐にわたりますが、最近はWEB関連の取材も多いです。

ただ、1時間しゃべっても、採用されるコメントは1行程度だったりすることも多々あります。

「こんなコメントだったら、自分でもできるわい!」と思ってるあなた。

私も以前は、そう思っていました。

でも、表面に出てくるコメントは、氷山の一角のような一部でも、取材元は、その下の水の下に隠れているベースが大きい専門家を見極めて、取材しているのです。

読み手側からすると、そこに書かれてある内容は、「何を話すか」よりも「誰が言ったか」の方が重要だということなのでしょう。

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さて、前置きが長くなりましたが、今日は、1月27日の日経新聞の「認知症保険、保障広く 一時金で「軽度障害」対応も」という記事の取材に関して、もう少し詳しくご紹介したいと思います。

記事にもあるように、昨年末、エーザイと米バイオジェンが開発したアルツハイマー病治療薬「レカネマブ」が保険適用されました。

以前から話題となっている薬価(薬の公定価格)は、体重が50キロの人の場合、年間費用は298万円です(MRIなどの検査費用等が別途かかる)

ただし、患者さんの自己負担額は1~3割で、高額療養費制度によりさらに抑えられます。

70歳以上で、一般的(年収約156万円~約370万円)な年金収入の人であれば、月1万8,000円、年額14万4,000円が上限です。投与は、点滴で2週間に1度、1年半まで。投与回数は36回です。

2024年1月からスタートして、2025年の6月まで月2回、投与を行ったと仮定すると、上記の所得区分の人の高額療養費適用後の負担額は、次の通りです。

・2024年1月~12月(月2回×12月=24回) 1万8,000円×12カ月=21万6,000円→14万4,000円①

・2025年1月~6月(月2回×6月=12回) 1万8,000円×6カ月=10万8,000円②

①+②(36回)合計25万2,000円

いかがでしょうか。この程度であれば、大丈夫。あるいは何とか払えるといった人が多いのでは。

ただ、問題は、この治療を保険適用で受けられる患者さんが限定されているという点です。

対象は、「アミロイドβの蓄積が確認されたアルツハイマー病患者で、認知症の症状が軽度の人とMCIの人」となっています。

つまり、「ん?もしかして」と思ったら、ご本人か家族か。いずれかが病院に行って、検査を受ける必要があるのです。

厚労省が提示する「最適使用推進ガイドライン」では、「MMSE(簡易問診検査)が22点以上」と定められています。

そこで登場するのが、認知症保険です。

最近の認知症保険は、MCIと診断されたときに一時金が出る特約を付帯できるものもあり、早期発見のインセンティブとなっています。

なお、冒頭のレカネマブの米国での販売価格は、年間26,500ドル(1ドル148円約392万円)に設定されています。

一般的に、日本での薬価は、米国よりも低くなることが多いのですが、それでもエーザイさんは、もうちょっと高い薬価を期待していたことでしょう。

薬によって、アルツハイマー病の患者さん一人にかかるコスト(医療費・介護費用など)が抑えられるだけでなく、医療的・社会的な経済効果もあるわけですから。

エーザイさんでは、「社会的観点に基づくレカネマブの年間価値は最大467万5,818円になる」としています。

詳しくはこちらをご参照ください。

臨床第Ⅲ相Clarity AD試験データを用いた、日本における「レカネマブ」の社会的価値について、査読学術専門誌Neurology and Therapy誌に掲載

ここで登場するQALY(クオリー、Quality-adjusted life years= 質調整生存年 )とは、医薬品の費用対効果で使われる指標です。

QOL(Quality of life=生活の質)と生存年をあわせて評価するための指標で、 完全な健康状態を「1」、死亡を「ゼロ」としてQOLを数値化し、そこに生存年を掛けて算出します。

要するに、生きていても、QOLが低い状態では意味がない。治療によって、健康なときと同程度の生活ができるようになればいいですよね。それを加味した薬剤の費用対効果をはかる指標です。

ちょっと、難しいかもしれませんが、興味のある方は知っておくと良いと思います。