親ががんになったとき、子どもにどう打ち明けたら良いのか?

親ががんになったとき、子どもにどう打ち明けたら良いのか?

みなさん、ごきげんよう。FP黒田です。

日頃、がん患者さんやそのご家族から、さまざまなお悩みをお聞きするのですが、その中に、「子どもに親(自分)のがんのことをどう伝えたら良いだろうか?」というご相談を受けることがあります。

親ががんに罹患して、中・高校生の子どもが不登校になったり、勉強しなくなったりする話も耳にします。それが直接の原因ではないのかもしれませんが、きっかけの一つではあったようです。

私自身は乳がんに罹患したとき、娘はまだ5歳。それでも、子どもは周囲がわさわさしているのを敏感に感じ取るもので、とても不安そうにしていました。

がんのことを伝えようか、どうしようか・・・一瞬悩みましたが、こそこそ隠すのも可哀そうだと思い、告知直後に夫から、「お母さんが病気(がん)なったため、富山の実家から千葉の自宅に戻ることになり、そうなるとお引越しをして保育園のお友達と別れなくてはいけないこと」「お母さんの病気を治すために、家族三人で力を合わせて頑張ろう」みたいなことを娘に言い聞かせました。

もちろん、どれくらいコトの重大さを理解したのかは定かではありませんでしたが、とりあえずわかった!と大きくうなずく娘。

それでも、私が入院中は不安定になって、「お母さんに会いたい」と急に大泣きすることも。お見舞いに来たときは、子どもながらも、そういうところを見せないようにがんばっている姿が、これまた健気で・・・

それから2年ほど経ち、娘が小学校に入学した頃、「CLIMB(クライム)A child’s support program」というがんの親を持つ子どものためのサポートプログラムを、東京共済病院さんで実施していることを知った私は、娘と2人で参加しました。

プログラムは全6回。このプログラムを提供するための研修を受けた、医療現場のスタッフ(臨床心理士、ソーシャルワーカー、看護師、チャイルド・ライフ・スペシャリスト、医師など)がファシリテーターとなって、実施しておられます。

結果としては、本当に参加して良かった。

なんと娘は、ずっとがんという病気は移るものだと思っていたそう。まるで風邪みたいに。だから、自分もいつかお母さんみたいにがんになるんじゃないかと不安に感じていたというではありませんか!

この2年間。そんな心配を娘にさせていたのかと思うと、本当に辛かったですし、子どもに病気のことをきちんと正しく伝えることの難しさを痛感しました。

普段の娘の様子からは、そんな風に思っていたなんて想像もしませんでしたから。

聞けば、親ががんになったことを自分が悪い子だからだと思っているお子さんも少なくないそうです。

子どもにどんな風に伝えたら良いか困ったら、主治医や看護師、MSWさんなど、専門家から伝えてもらう方法もあると思います。

とくに、思春期など難しい年齢のお子さんは、親の言うことを素直に聞かない・聞けない場合もあるでしょう。この年頃の子どもは、学校の先生や医師など、いわゆる権威のある者の言葉なら聞いたりするのでは?

なお、私と同じように、子どもにどうがんのことを伝えるかお悩みの方は、こちらのHPを参考になさってください。⇒HopeTree(ホープツリー)~パパやママががんになったら~

こちらは、CLIMBプログラムの詳細や実施医療機関の紹介や、がんになった親を持つ子どもをサポートする情報を提供するサイトです。

さらにあれから数年経ち娘は・・・数か月前に、胸の痛みを訴えたことがありました。

ネットで調べると、成長期にある女子にはよくある症状らしいので、大丈夫だよと伝えたのですが、娘は、「きちんと専門家の意見が聞きたい!」と主張し、病院に連れて行けと要求。

診察を受けて、担当医の説明に満足する娘を見て、看護師さんがひとことー「安心するのが一番だからね」

まあ、しっかりした娘に成長してくれて母も嬉しいです(苦笑)。

プログラムのときに娘が作ったお人形

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ちゃんと裏も色塗りします!

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2015年度第3回(11月)の「おさいふリング」について

みなさん、ごきげんよう。FP黒田です。

11月14日、18日に今年度第3回目のおさいふリングが開催されました。

今回の参加者は2名。人数は少なかったのですが、それだけにじっくりとお話を伺うことができました。

おさいふリングの構成は、おもに①がんにどれくらいお金がかかるのか、②がんは収入にも影響を与えることについて、③がんの経済的リスクに備える方法、の3本立て。

第1回目に①②について、第2回目に③について、それぞれ黒田の簡単なレクチャーとともにみなさんご自身を振り返っていただくグループセッションを行います。

同じテーマであっても参加者が変わると、お悩みや問題点、考え方などはさまざま。いつも新鮮な気持ちで患者さんと向き合います。

また2回目のおさいふリングの前には、別の医療機関でがん患者さんの個別相談を担当しましたので、まさに1日’がん患者さんデー’という感じでした。

次回のおさいふリングは、2016年1月16日(土)13:00~14:00、20日(水)18:30~19:30となります。

ご興味がお有りの方は、聖路加国際病院・がんに関するご相談までご連絡くださいませ。

 

 

 

QALYs(質調整生存年)の考え方の普及と私たちへの影響について

みなさん、ごきげんよう。FP黒田です。

今日は、私が最近気になっているQALYs(質調整生存年(quality adjusted life years))について。

なかなか覚えられないのですが(苦笑)、クオリーと呼ぶみたい。

私はよくセミナーなどでも、「がん患者さんは、罹患後のQOL(生活の質)を重視して、それにお金をかける傾向にあります」とお話をするのですが、QALYsというのは、まさにこのQOLで重みを付けた評価指標です。

これまでがん治療に利用される抗がん剤などの医薬品や医療機器などを評価する場合、「有効性」「安全性」「品質」などが問われてきました。それが最近、「費用対効果」-つまり価値に見合った価格なのか?ということが問題視されてきています。私も今年に入ってよく耳にするように・・・

このように医薬品の費用対効果を評価する学問は「薬剤経済学」とよばれ、前述のQALYsが、薬剤経済学における医薬品の価値、医療の価値を表す標準的な評価値として用いられているそうです。

QOLを0~1(効用値)に換算し、1年間まったく健康に暮らせたら1、死亡したら0として、以下の式にあてはめて計算します。

ある健康状態でのQALYs  =【生存年数】×【QOLスコア】

たとえばXという治療をうけた場合、10年間生存期間が延長すると仮定し、最初の5年は効用値(QOLスコア)がまったく健康に暮らせる状態1.0で、その後の5年は効用値(QOLスコア)が0.7であった場合、以下のように求められます。

QALYs=(5年×1.0)+(5年×0.7)=8.5QALYs

また、同じ生存年数であったAさんとBさんについても、それぞれの過ごし方やQOLはまったく異なるわけですから、その治療を行うことによって、どれほどQOLを維持しながら快適に過ごせたかを評価できるQALYsの考え方は、医薬品を客観的に評価する際には必要だと考えられています。

このような薬剤経済分析は、欧米では盛んに研究され実用化されています。
さらに、日本でも2016年から費用対効果評価を新薬の保険適用の際に利用するなどの動きが出てきています(次の報道以後、私が把握している限りあまり目立った発表はないようなのですが・・・)。

(*参考)「新薬の保険適用、費用と効果で絞る 政府が新基準」(日本経済新聞2014年2月2日付け)

さて、そこで問題です。QALYsような考え方、つまり医療に経済性を求めるようになった場合、私たち患者にどのような影響が出てくるのでしょうか?

要するに、国民医療費もアップアップしているなか、高齢化がさらに進めば、どうなるかは想像するだに恐ろしい。

限られた財源のなか、費用対効果が高いものだけ公費でまかなって、それができない部分は、個々の負担に頼らざるを得なくなるということ?

そうなるとさらに、混合診療が進み、お金持ちでなければ希望する効果的な治療を受けられなくなる?

「このお薬を使えば、あなたの病気の状態が改善される可能性は高いのですが、QALYsがあまり良くなく、費用対効果が悪いと評価されているので、保険適用になっていません。全額自己負担であれば、利用できるのですが、どうされますか?ちなみに費用は500万円です」

さて、主治医からこう告げられたら、あなたは一体どうします?